石割山2030


私達、富士トレイルランナーズ倶楽部は、2022年春から環境省富士五湖管理官事務所と協働で、現状を憂いていた地元の方々やボランティアさん達と共に山中湖村の石割山登山道補修プロジェクトを開始しました。

石割山登山道は長年に渡り多くの人に愛され利用されてきましたが、保全の手が不十分であった結果、自然作用と相まって荒廃が進んでしまったと考えられます。


当初は大崩落した数カ所をなおし、ハイカーやトレイルランナーなど利用者の皆さんが安全に石割山を楽しむことを念頭に作業していましたが、植生をはじめとした周辺の生態系を回復させなければ登山道の崩壊は止まらないことに気づきました。

残念ながら石割山に限らず国内の多くの登山道でおこっているネガティブ方向に大きく崩れた「保全と利用」のバランス。これをポジティブ方向に反転させるには、登山道の補修以上に周辺生態系の回復作業が最重要であり、そのためには、観察と手直しを繰り返しながら数年がかりの腰を据えた取り組みが必要と考えます。

幸いなことに初期に施工した補修箇所では、植生回復などの良い兆候が現れだし、明るい希望が見えてきました。

また世界に目を転じれば、昨年12月のCOP15で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が合意され、生物多様性の保全と回復は脱炭素とともに人類の緊急の課題であり私達の生活に強く結びついています。

自然環境の回復による登山道の修復は、ネイチャーポジティブに貢献する取り組みであると考え、NPO活動の中長期目標として「石割山2030」を策定しました。

石割山2030 我々の宣言

■生物多様性国家戦略に合致した2030年ネイチャーポジティブの実現を石割山で目指します。

■石割神社から山頂までの8ヶ所の登山道修復で得た経験を活かし、多くのハイカーが利用する山頂から平尾山方面の登山道と東海自然歩道を経由して石割神社駐車場に下山する周回登山道の大崩落地を修復します。

■裸地化した山頂部や複数のガリー侵食が進んだ山頂直下を含めた登山道周辺の植生を研究者の助言を得てオリジナル種で回復させ、生態系の安定を目指します。

■経過観察に基づく丁寧な施工と作業を行い、必要があれば計画変更も柔軟に対応します。

■次世代を担う子どもたちや自然理解を深めようとする一般の方に向けた環境ツアーやイベントなどを地域関係者と連携して開発します。

■同じ志を持ち各地で活動する団体、個人と連携し、幅広く技術やノウハウを共有します。

■持続可能な「保全と利用」に必要な資金、労力、技術を獲得するための仕組みを構築します。

*ネイチャーポジティブ(自然再興)とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを意味します。2030年までに「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を実現することが、2050年ビジョン(自然と共生する世界)の達成に向けた短期目標です。「2030年ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現に向けて、人類存続の基盤としての健全な生態系を確保し、生態系による恵みを維持し回復させ、自然資本を守り活かす社会経済活動を広げるために、これまでの生物多様性保全施策に加えて気候変動や資源循環等の様々な分野の施策と連携し取り組みます。

https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/j-gbf/about/naturepositive/
(環境省公式サイト 2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF)ページより抜粋)

VIDEO

石割神社から山頂に向かう登山道の荒廃していた箇所の施工前と施工後の動画です。
植生の復元を目指した施工をした結果、利用者にとって歩きやすい登山道となり、
道を外れて歩く事が減ることでより土壌の安定が期待できます。

驚きのビフォー・アフターをご覧ください。

石割神社〜山頂① 施工前

石割神社〜山頂① 施工後

石割神社〜山頂② 施工前

石割神社〜山頂② 施工後

石割神社〜山頂③ 施工前

石割神社〜山頂③ 施工後